彼はよくスーダラ節を歌った。
彼が植木等の真似をしながら歌う時、彼はご機嫌だった。
中学3年生の時のクラスメートだった。
洋品店を経営していた。
俺は定年になって中国から帰ってきた時、彼の消息が気になっていた。
彼と仲の良かった真ちゃんも消息不明。
中学校の同期会で、彼の消息がわかった。
亡くなったということだった。
それを教えてくれた道郎君も、その後すぐ亡くなった。
植木等のスーダラ節を見て、彼のことが浮かんできた。
雅彦君だ。
妹さんと弟さんがいたが、彼は独身だったので消息はわからずじまいだった。
もし彼の弟妹に偶然会うことがあれば、死んだ原因をちゃんと知りたいと思っている。
かけっこの早い男だった。
やさしい男だった。
好きな同級生がいたが、告白できなかった。
60歳を過ぎてからの同期会に彼女は来た。
俺は彼女に彼の思いを伝えた。
言えばよかったのに、と今更。