耽溺

【酒色にふけりおぼれること】広辞苑

定年後の生活について若いころから考えていた。

中国の京劇と相聲に耽るつもりでいた。

中国から帰って来る時、京劇のDVD、相聲のCDを大量に買い込んできた。

60歳と言う時代、それに夢中にはなっていなかった。

見なければ、聞かなければという、思いだけがあった。

70歳を目前にして、このまま宝の持ち腐れでいいのかとの思いで、

録画し続けたDVDの中国ドラマを見始めた。

そして今、1日8時間ぐらい中国ドラマを見る生活が始まった。

【耽溺】という言葉の意味は、酒色にふける意味などで、悪いことに夢中になるという意味だが、俺の生活は中国ドラマ鑑賞一色になってきた。

ただ漠然と見ているのではない、中国語をしっかり理解しようとしているのだ。

80時間のドラマを最低2回は見ている。

中国ドラマに追われる生活になってきた。

今日も眼科でバズーカ砲300発、レーザー治療を受けて来た。

瞳孔を広げる薬を使ったので、しばらくはテレビを見にくかった。

それでもまだ見続けている。中国語では芝居好きのことを【劇迷】という。

俺は【中国ドラマ迷】になっている。

生活のすべてを忘れて見ているので酒色におぼれた意味での【耽溺】かも知れぬ。

これが70歳の俺の姿になっている。

大学1年生の頃、東洋思想に夢中になり老荘思想をまねて生きた。

師匠は野末陳平さんだった。勝手に師匠だ。

大学2年の頃からは落語に夢中になり新宿末廣亭に通った。

レコードの古今亭志ん生に夢中だった。

大学3年の時、沖縄を旅して沖縄狂いになった。

沖縄民謡を歌い、沖縄舞踊を10年間習った。

そして70歳の今、中国ドラマだ。

今、見ているのは「瓔珞」乾隆帝後宮物語だ。

見終わったら寝る。

ベットに入ったら、朝までYOUTUBEで「三国志」と「水滸伝」。

耽溺、酒色でなかったのでいいだろう。