久しぶりの彼の声
懐かしかった。
音楽部だった彼の声は、昔のようにはっきりして若々しかった。
東京時代彼のアパートに空き室があることを知って、
その隣の部屋に俺も入り込んだ。
新宿区戸塚2丁目、面影橋電停のすぐ近くだった。
彼からの電話で、鹿児島在住の友人たちの消息を知らせたかったが、
すぐには思い出せなかった。
彼にはここに消息を書き込むと伝えた。
彼のお母さん、お父さんの姿も浮かんできた。
お父さんが東京に来られた時はごちそうにもなった。
スマートなお父さんだった。
彼に姉妹の消息を訊くと、鹿児島に住んでるひとは誰もいなかった。
克信君との恋のライバルだったことをすぐ思い出したが、
そのライバルを争わせた女性の消息は知らなかった。
先日の哲郎君を送る会について彼に訊かれたが、2組の連中が主になって開いてくれた。
我々の担任、日本史のK先生は心臓が悪くて療養中だということを噂で聞いている。
彼もアルバイトをした文明堂の美人店員はY幾代さんは新潟出身のT店長と結婚されたが、T店長は十数年前に亡くなられたということを文明堂で聞いた。
Y幾代さんが秀輝君に憧れていたと話をされたことを思い出している。
埼玉県所沢に住んでいるのでは。