母の夢たっぷり

母の食堂の前に、引っ越しして廃棄する冷蔵庫などが置いてあった。

ほかの電気製品や家具もあった。

整理するつもりの本やビデオテープも置いてあった。

俺は学校の寮に、取りにきてもらおうかと思っていた矢先、

母がすでに古道具屋を兼ている魚屋さんに全部売ってしまった。

3万円で、俺は数冊の本をその主人に返してもらえないかと交渉すると、

その親父は本懐の10倍ぐらい払えば返却していいというので、あきらめた。

そして俺はそこの店員に負け惜しみを言っていた。

まだ中にテレビなどが10台あるが、それは路上に値付けカードを貼って、

直接売るなどと言っていた。

母はその魚屋で魚を数匹買っていたが、お金は払わなかったようだった。

母は決断力のある人だった。その母があの時の元気のままで夢に出ていた。

親父がいつも言っていた言葉「母ちゃんは大事な本でも何でも、風呂焚きで燃やしてしまう」と。

目が覚めて、大量の本を処分したが、残りの本も早く読んで処理しなければと、

あらためて思った。

一番元気な時の母の夢だったが、値打ちのある母との出会いだったと、

今思う。