駱駝祥子 竹中伸訳

そして、俥宿から引き出して来た俥は、一定の〈辻〉や、邸宅の門前などに梶棒を下ろして、ジーッと、好い椋鳥のかかるのを待っている。うまくゆくと、一日に三元五元と、ぼろい儲けをすることがあるが、その代りに運の悪い日になると一日じゅうお客がなくて、俥宿に支払う借賃だけただ損をすることになる。が、彼等はそのくらいのことは平気の平左である。