カステラの福砂屋だった

学生時代、新宿文明堂小田急デパート地下売り場でアルバイトをした。

店長の長谷川さんがいつも言っていたのが、カステラで一番の老舗は福砂屋ということだった。「カステラ一番電話は二番三時のおやつは文明堂」当時有名なコマーシャル。

文明堂のカステラや三笠山は死ぬほど食べた。傷物はいつでも食べさせてもらえたのだ。

ろくろく飯を食わなかった俺には最高のごちそうだった。一緒にバイトをした秀純君がぱくぱく食べているときの様子が目に浮かぶ。そのずっと後に、俺は糖尿病になった。

その時、数十年前に食ったカステラや三笠山のせいではとも思ったが。数日後に73歳になる秀純君に糖尿病は大丈夫かと聞くと、全然問題がないと言っていたが、学生時代のカステラを食った量が俺のほうが多かったような気がしてきた。

思案橋に行ったその旅で、何かロマンがあったような気がしてきた。