「若い時に一緒に仕事をしたことがあったので、西郷輝彦さんが亡くなったことは残念だった」と言われた。
そしてふと思いだした。
西郷輝彦さんのお母さんが、実家を売ろうとされていたことを。
母はその家を買おうとしていた。
衣料品の商売をしていたのでは、母は迷ったのだろう。
当時、母は人生相談をしていた、沖のおばあちゃんに訊きに行って、
買うのをあきらめた。母は食堂をしていたが「二兎追うものは一兎も得ず」という、
おばあちゃんのことばだったようだ。
その時、母が買えばいいのにと俺が思ったことも思い出した。
もしその衣料品店を母が買っていれば、俺が後を継いだのではと思ったところで、
西郷輝彦の中学校の後輩、市さんに電話してみようか。