都一処

これを見てわかるひとは、

北京通だろう。

北京天安門、前門の近くにある北京の有名焼売店だ。

1981年、この店に人が列を連ねていた。

わけのわからないまま、俺も並んで切符を買い、

この店に入った。

しかし何をしていいのかわからず、席取りをして、

自分の食べる場所を見つけた。

そして焼売を注文した。

大きなテーブルの向かい側に可愛い女性が座っていた。

そう安くなない焼売、それを一人で食べにくる女性、

貧乏な人ではないだろうと思いながら、チラ見をして、俺も食べた。

食べ終わってから、その女性に声をかけた。

「一緒に写真を写しに行かないかと」しかし、俺のカメラにはフィルムは入っていなかった。俺は、写すまねをするだけにするか、正直にフィルムがないことを伝えるか迷った末に、「人民大学の留学生ですが、大学寮までフィルムを取りに行ってから一緒に」というと、その女性は方角が違うというので、電話番号だけ教えてもらい、その日は別れた。そして翌日、あてにはしていなかったが、まさかのことが起きた。

その店都一処には北京に行くたびに必ず寄っている。

あの有名な北京ダックの店、全聚徳の隣の店だ。