原爆ドームに行ってみたら、ふっと出てきたんです。
ええ、みっちゃんが猫を抱いていて。
あの猫はね、冷たかった。死んでる猫だった。
あのころは女学生も来て、僕の見ている前で打っていた。
僕、聞いたんですよ。「なんでヒロポン打つの」って。
そしたら「痩せたいから」。
出征した担任教師が戦死。これからまだまだ。
いろいろなことが起こるにちがいないと思いました。
とにかく憂鬱でした、世界が。
ええ、私にはわかっていました。
この人たちはもうすぐ死んでいくんだって。
一度飛び立ったら還ってきてはいけないということも。
終戦後の大連ではコックリさんが大流行しました。
大の大人が「コックリさん、コックリさん、
私たちはいつ帰れますでしょうか」とやる。