『昭和二十年夏、子供たちが見た日本』

 辻村寿三郎

原爆ドームに行ってみたら、ふっと出てきたんです。

ええ、みっちゃんが猫を抱いていて。

あの猫はね、冷たかった。死んでる猫だった。

梁石日

あのころは女学生も来て、僕の見ている前で打っていた。

僕、聞いたんですよ。「なんでヒロポン打つの」って。

そしたら「痩せたいから」。

福原義春

出征した担任教師が戦死。これからまだまだ。

いろいろなことが起こるにちがいないと思いました。

とにかく憂鬱でした、世界が。

中村メイコ

ええ、私にはわかっていました。

この人たちはもうすぐ死んでいくんだって。

一度飛び立ったら還ってきてはいけないということも。

山田洋次

終戦後の大連ではコックリさんが大流行しました。

大の大人が「コックリさん、コックリさん、

私たちはいつ帰れますでしょうか」とやる。