恋多き男

瀬戸内寂聴さんが亡くなって、

彼が俺に瀬戸内寂聴さんみたいな男だと言った。

何か嬉しかった。

今も電話で彼が瀬戸内寂聴さん似だというので、

いい気持になっていたところ。

「恋多き」と彼が言う、何だ恋多きということで俺のことを言ったのかと苦笑いしていたが、彼は恋深き男だった。

おばさんの見るドラマを一緒に見ているというので、おばさんと言うな。姉さんと言わんか、というと彼も苦笑い。

二十歳の恋を貫いた彼に、「恋多き」と言われて、喜んでいいのか。

恋多きと俺を表現しても、「もてたね」とは一言も言わない。

つかの間の電話での語りだった。