アドレスホッパー

二十歳前の男女が、

旅を続けながら、ホテル住まいをしていた。

テレビの映像だ。

「愛はお金に変えられない。こうして愛を確かめながら生活することが大事だ」と

男性が言っていた。それを聞きながら、心が動かないのはなぜか?

73歳だからだろうか?80歳の爺さんが「愛し続けてきました」というのなら、

感動するだろうが、二十歳の男の「愛より大切なものはない」という言葉には、心が動かない。

パートナーが変わったときになんというのだろうか?と。

俺は若い時に口にした言葉に「一生愛します」と言った記憶はない。

記憶にあるのは「今日は好きです」だった。時にははっきりと「今日はを」、

時には小さく口ずさんで「今日は・」があったような気がする。

もし昔の友人たちと会うと、無責任な男だったと言われるであろう。逃げの男だったとも。だから俺は、一筋に恋に生きた友人たちを羨むのである。尊敬するのである。

そんな友人は自分の周りにもいる。彼らは好きだった女性にご飯を食べさせ続けてきた。愛という言葉は、俺にはあまり使ったように見えなかったが、妻には言い続けているのだろうな。