武憲君がやって来た

突然の訪問だった。

「來る」という電話があったので、

慌てて部屋を片付けた。

誰も来ないことを前提に生活をしている。

そして彼が来た。

花を持ってきた。

誕生日の花とのことだった。

誕生日までは少し早かったが、

蘭の花を届けてくれた。

昨日、秀輝君と電話で語ったことを話すと、

すぐ彼に電話をしていた。

彼の電話帳には友人たちの名前があった。

先日は中学校の同級生に花を届けたようだ。

秀才だったその女性も軽い脳梗塞だったと。

彼も逢うということを大事にしているようだ。

私よりずっと背が低かったが、昨日逢うと、俺と同じぐらいの身長になっていた。

俺は7センチぐらい縮んだようだ。

高校時代はハンサムだった彼も、白髪になっていた。

俺は髪こそ黒々しているが、歩く姿は90歳の老人だ。