私は台湾中部の彰化駅にいた。
その年の春節を台湾の友人の家で送り、
台北に帰ろうとしていた。
友人と弟が駅に見送りに来た。
そして帰ったが、すぐ引きかえしてきた。
なぜ引き返してきたのか、もう忘れたが。
別れの予感がしたのではとその時思ったような気がする。
最高に楽しかった友人宅での春節だった。
私は何かを決断する気持ちでその日旅立とうとしていたのだった。
2月14日はバレンタインディ、俺には親父の命日でしかなかったが、
その日を決断の日と決めていた。
その友人への未練をすべて断とうとしていた。
そして台北に帰った。その後、3月末に日本に帰国するまで、その友人とは会わなかった。その人から電話があったのだが、俺は逢わないと決めていたのだった。
それから11年後、
俺の結婚式が鹿児島の新聞の一面に報道された。
同じ2月14日だった。しかし気付いたのは、今日だ。
今までは同じ日だったことは考えたこともなかった。
今思えば不思議な気がする。
台湾でのことは2月14日を意識しての行動だったが、結婚式の記事はその日を俺が知っていたわけではなかった。
不思議の好きな俺が突然その不思議を思いついたが、くしくも明日12月4日は台湾の友人の72歳の誕生日になる。