母の仏壇と書き込んで、
いやこれでいいのかと一瞬ためらった。
今では母の仏壇だが、その時は父の仏壇だった。
母は生きていたので、
その仏壇に陶器の千手観音が飾られていた。
その腕がぽろっと落ちたそうだ。
母はそのこをを言わなかった。
この日、娘が生れた。
娘が生れたとわかったとき、母は腕が折れたことを教えた。
帝王切開で娘は生れた。
「観音様が腕を捥がれてまで助けてくださったのだと」
母は言った。
それから33年たった今日。
娘は家に居る。
まだ嫁にも行っていない。
母の仏壇にはその観音様が置いたままである。